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 イサムノグチと言う彫刻家の名前を聞きなじみがないと思う方がいても、竹ひごと和紙を使った照明を考案した人、といえば身近に感じる方もいるかもしれません。イサム・ノグチはその名の通り日系アメリカ人で、1950〜70年頃活躍した彫刻家です。抽象的な作品が多く、椅子などの家具も多く手がけました。

私の家から歩いて10分ほどのところに彼の美術館があります。この美術館は2階建て倉庫1つ分と屋外作業場1つ分と竹などを植えた庭とで構成されており、落ち着いた雰囲気の中でゆっくりと作品を鑑賞することができます。イサム・ノグチの作品からは、その素材に対する愛情が感じられます。木を刻んでも石を彫っても、モチーフの感触を最大限生かし魅力を引き出している。力づくで作りあげるのではなく、内から掘り出す感じが大きくて優しい。

この美術館では常設展示のノグチの作品の他に、チェスをテーマにした企画展が行われていました。ここではノグチとも親交のあった著名な芸術家たちの作ったチェスセットを見る事が出来ます。マックス・エルンスト、マン・レイ、アンドレ・マルロー、ジャコメッティの抽象彫刻のようなチェスセットをはじめ、ジョンケージら音楽家が書いたチェスのための音楽、チェスをテーマにした絵画などが展示されています。またノグチがデザインしたチェスセットが復元されており、これを使って実際にゲームを楽しむこともできます。

 

私は特にジャコメッティのチェスセットが好きでした。盤は大理石、チェス盤としては不可解で不規則なくぼみがあり、桝目はなく、駒は抽象的なフォルムの木片です。ともすればチェスという目的まで削ぎ落とされかねないような、抽象化。ただしその冷たくもあくまでエレガントなところに、感動すら覚えるのです。この展覧会は来年3月まで行われています。私は天気のよい休日に、また訪れてみようと思っています。

 

The Noguchi Museum

http://www.noguchi.org/