少し前になるが、MOMAの企画展を見てきた。何と言っても「SAFE」という企画展が面白い。人類は様々な脅威によってその存在を危険に晒されている〜それらから身を守るために開発された道具やシステム、あるいはその脅威そのものの提示、救護の為の道具などを展示している。例えば身を守るものとして、日本の「剣道の面」や中世欧州で使われていた「鉄鎖の鎧」、拘束服やガスマスクを展示。また病原ウイルスや病気のキャリアになる微生物をかたどったヌイグルミを展示することで、脅威の対象は「外部」だけではなく「内部」や「見えないところ」にもあるのだという視点を示す。それらから身を守る意識が様々な形の「シェルター」や「家」を作り、最終的には身体の「防護」と「救援」を求めるための道具、例えば反射板のついた防災頭巾やライトなどの展示に繋がっていく。
こうしてみると人類の歴史は、身を守ることを中心に発展してきたのかもしれないと考えさせられる。身を守るという意識は、身の危険を感じることの裏返しでもある。脅威を感じるということが、ある意味では文明を発展させ、その高度な知識が更なる危険を生み出してもいるというのは皮肉な事実である。国連という「世界を守る」為の機関を持ちながら、多大な脅威に常にさらされ続けるNYでこの「SAFE」という展示を行った事に強い意義を感じる。
この展覧会はアート作品と既製品が混在した異色の展覧会である、美術館が企業名の刻印された製品を展示するということの難しさを思うと、MOMAのリスクを厭わぬ挑戦的な姿勢に賛辞を捧げたくなる。この企画のキュレーターはPaola Antonelliという人、次のキュレーションも是非見てみたい。
※MOMAは企画展は撮影不可のため写真を撮る事はできないが、それ以外はフラッシュさえ焚かなければ撮影OKだ。画像は常設のCy Twombly。のびのびとした美しい作品。
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コメント
コメント一覧 (6)
脅威とか危険とか死とか悲しみとかがあるのかな、と思います。
例えば神様がいて、この世を作ったとするなら、
もっと幸せに暮らしていてもいいような気がするのです。
けどそういう危機があることで、学ぶこともあるのかなとも思います。
神様もわざわざそういうふうに作ったのかも。
そういう世の中で、人間が編み出した様々な「防御」の展示。
確かに面白そうです。
この世に戦争・病気がなく、完璧な世の中だったとしたら、人々はもっと酷く倦んだかもしれないですね。今の日本はとても平和で幸せですが、それは私達が目にした事がない「地獄」の遺産なのだと思う事があります。
しかし人間は進化すると信じたい。より良い方向へ。
例えばティーチャーズ・ガイド。プロジェクト・ゼロとの共同で、教師のための美術館案内として初めてこれを試みたのはたしかMoMAだったはず!これからもっと活発にするべき日本の美術普及にはお手本となる頼もしい美術館です☆
そして伴戸さん、良いお年を!
そういう意味でMOMAは先端ですね。日本では金沢21世紀美術館なんかも面白い試みをしていますね、応援したい美術館です(と言いつつまだ出掛けていませんが…)。
もう日本はお正月ですよね、明けましておめでとうございます。NYもあと3時間で2006年、お互い良い1年になりますように!
とても興味深い考え方の展示ですね。身を守る歴史…常に戦いなんですね。戦いが終わってしまうと生きていけないのかも?
素敵な一年になりますように!!
戦いは何時も何処にでも存在するんでしょうね。人間に課せられた試練かもしれない。
Bさんにとっても良い1年になりますように!卒制がんばって下さいね!