a41ae231.JPG

今日まで東京オペラシティーで行われていた企画展“melting point”を見に行った。Jim LambieErnesto Neto、渋谷清道の三人によるインスタレーションの展覧会である。「melting point(融点)」というタイトルは作品が空間・人に影響を及ぼし、新たな「場」へと変容していく様子を暗示して付けられたという。鑑賞者が自然と作品に参加するように作られているインスタレーションは、まさに三人三様の空間を作り出しており、私は心地よくそれらを体験することができた。

中でも私は渋谷清道の作品に魅力を感じた。全ての鑑賞者は展示空間の手前で靴を脱ぎ、狭い通路を抜けて、小さな出入り口が設けられた空間(作品名「ミステリーサークル/6番目の小さな海姫」)へと誘導される。この部屋に入る為には身をかがめて、床面から1m弱の高さに開けられた小さな穴をくぐりぬけて進んでいかなくてはならない。こうした入口はおそらく茶室を意識してのことだろう、一瞬驚いたが床を這って通過する感覚は不思議と心地よい。内部は白一色のモダンな空間で 清廉な印象すら受ける。薄闇の部屋の天井は円形の吹き抜けになっており、薄い布を胡粉で着色したモチーフが幾重にも重なって見え、独特な詩情を感じさせる。

もともと茶室の出入り口として設えられる躙口(にじりぐち)は二尺四方ほどの出入口で、どのような人であろうとも頭を下げて、身をかがめなくては通れない位に小さく作られる。これは武士が帯刀して入ることができないよう、意図的に工夫されたものとも言われている。躙口は茶室の中での平等を守るという役割を持ち、また茶道の空間哲学を表わす象徴なモチーフでもあるのだ。現代のドアの規格サイズはほぼ統一されているので「出入口」に対する意識は希薄になりやすいが、「ミステリーサークル/6番目の〜」という作品はこの導入部があるからこそ成立していたと思う。また作品に使われている胡粉や布の温かみのある質感は 日本的な美意識を感じさせ、構築的というよりもどことなく情感やニュアンスを優先しているように感じられる。作者が大学で日本画を専攻していたというバックグラウンドや美意識がよく伝わる作品だと感じた。

 

またエルネスト・ネトの作品もとても良かった。芸術と空間と人間+そこに参加する人間同士のコミュニケーションとを1つの地平で考え、1つの作品に実現しようと試みている。国や言葉が異なっても、好奇心とイマジネーションで人間同士は繋がることができる…そんなポジティブなメッセージを体感できる。どんな国の子供たちが見てもワクワクして遊んでみたくなるような作品だ。ヴェネチアビエンナーレ他多くの国際展でも活躍してきた作家らしいパワフルさと明快なメッセージ性が気持ちよい。エルネスト・ネトは日本でも度々展示をしているので、次の機会にも是非作品を見てみたいと思う。

 

melting point展/東京オペラシティ アートギャラリー

http://www.operacity.jp/ag/exh85/