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奈良国立博物館にて行われている正倉院展を見に出かけた。正倉院に納められてきた宝物は、普段は天皇直筆の「勅封」によって閉ざされ厳重に護られている。年に一度の秋の虫干し・点検の時期に 封が解かれるのを機に、毎年この時期に70〜80点ほどの宝物が選抜され奈良国立博物館にて展示されている。59回目を迎える今年は、特に臈纈(ろうけつ)染め、麻の衣類、古裂などの展示類が充実しているのが特色だ。

ポスター・チラシ・切手などでも紹介されている 羊の文様を模ったろうけつ染めの羊木臈纈屏風は、何処となくおっとりとした筆使いが感じられる染物。この他にも中央アジアに生息している象や鷹など、色々な動物が描きこまれている染色を見ることができ、シルクロードを通じてこうした図柄が はるばる日本に伝えられたことを示している。

私が印象に残ったものは笙によく似た「竽(う)」という楽器。構造は笙とほとんど同じだが 全長は1m近くある。垂直に並んだ17本の竹管を束ねるように、最下部に金属で造られた本体があり、黒漆や薄い金属板で迦陵頻伽(かりょうびんが)が描かれている。迦陵頻伽とは頭は人 身体は鳥で、美しい声を持ち 天上に住むとされる天女のような生き物。彼女は漆黒の漆地の中を 輝く羽をひろげて舞いながら この楽器を奏している。これに良く似ている笙の音色は「天から差し込む光」を表していると言われてきた。それならば天女の吹く竽の音色もまた、天上の輝きを秘めた響きに違いない。

 

この展覧会は11/12(月)まで行われている。終了間近なので混雑は避けられないが、閉館1〜2時間前からは比較的見やすいので夕方の鑑賞をお薦めしたい。

 

第59回正倉院展  http://www.narahaku.go.jp/exhib/2007toku/shosoin/shosoin-1.htm