遠き道展(石川県立美術館)

石川県立美術館に巡回中の「遠き道展」にて、盲学校の皆さんをお迎えしたワークショップに参加させていただきました。

「蜜蝋ペン」はカラフルな棒状の蜜蝋をセットすると、やがて熱で溶けた蜜蝋がペン先からインクのように出てくる仕組みになっています。蝋が固まればすぐに立体的な線になるので、視覚にハンディキャップのある方も自由に作画を楽しめる道具です。

今回参加された皆さんは主に盲学校の小中学生さんたちで、用紙いっぱいに大好きなスイーツや笑顔、ダルマさん、ハートでいっぱいの海や新幹線など思い思いに好きなものを描いてくれました。本当にのびのびとした素直な作品ばかりで見ていると楽しくなります。描かれた絵に触れながらお話したり、手をとって一緒に描かせて頂いたり、私自身もこうした新しい道具にワクワクしながら、イメージをシェアして一緒に絵を描く楽しさを知ることができました。
 

視覚にハンディキャップのある方々は「見て楽しむ」ことを前提としてきた旧来の美術館の展示では、充分に楽しむことが難しかったかもしれません。しかし近年の美術においては、インタラクティブアートなど鑑賞者が参加し体験できる美術、パブリックアートなど公共にあって人や環境に潤いを与える美術が定着してきており、こうした考え方は広く必要とされ進化し続けています。日本画や古典作品などは性質上 直接触れるという訳にはなかなかいきませんが、今回のように知って(体感して)いただけるように工夫できる余地はありそうです。様々な人々が自由に楽しめる切欠を作り 他者と繋がり 心豊かになれる場所―これからの美術・美術館がそうした場になれたなら、美術はもっと社会や土地やそこに暮らす人々を豊かにできるでしょう。


 遠き道展では巡回先の各美術館で今回のような試みを行っています。多くの方々の知恵と協力で成り立ってきた遠き道展ワークショップ、今後沖縄や四国でも行われますのでお近くの方はチェックしてみてください。

 

 

遠き道展

石川県立美術館にて2010年1月4日〜2月7日まで開催中。
  
http://www.ishibi.pref.ishikawa.jp/index_j.html

※石川県立美術館での蜜蝋ペンのワークショップは終了しましたが、

作者音声ガイドや触れる絵の模型などは会期中 常時設置されています。

また作家のギャラリートークも予定されています。